シリーズシンポジウム 第2回(2018年10月20日開催)

テーマ「新しいタイプの産業人財像から未来の教育を考える」

10月20日(土)、教育課題に関する研究会議「教育イノベーションイニシアティブ」のシリーズシンポジウム第二回が赤坂インターシティ コンファレンスセンターで開催されました。この会議は、「複雑に絡み合う教育課題を解決するには、①教育界及び各界の知恵の交流、②具体的な共創機会の創出、③教育の“そもそも”を考える機会、が極めて重要である」との有識者のご意見をもとに開催されています。第二回は、『新しいタイプの産業人財像から未来の教育を考える』をテーマに、文科省・経産省など教育行政を担う省庁関係者、教育長、学校長、研究者、現場教員、教育NPOをはじめとする教育界の方々、さらにはビジネス界の方々も含め、全国から55名が参加しました。
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基調講演では、経済産業省 商務情報政策局 総務課長の伊藤禎則氏より、「新しい産業人財の誕生とその背景にあるビジネス環境の変化」というタイトルで講演がありました。伊藤氏は、「『人生100年時代』や『AI×データ時代』の到来により、職務無限定、長時間労働、年功序列、新卒一括採用、終身雇用、OJT依存といった、『日本型雇用システム』そのものが大きく変わろうとしており、その結果、働き方が変わりつつある」と指摘されました。また、AI×データ時代の進化に伴い、「働き方は、①長時間労働の是正、②人財の最適活用、③エンゲージメント、モチベーション重視した人財育成・人財投資の強化、へとシフトしていく」と説明されました。人財評価の在り方も、勤続年数や勤務時間ではなく、成果とそれを支えるスキルで評価する「働く人のニーズや価値観の多様化がベースのモデル」に転換する必要があるとし、「リカレント教育に代表される『一億総学び』が重要になる」と述べられました。最後に、第四次産業革命において必要となる能力について、「仕事が変化し、高度に専門化してくることを踏まえ、必要なマインド・基幹能力・リテラシー・専門知識、それぞれの再定義が必要」とも述べられました。最後に「子どもの学び」に関して、世界的に著名なAI研究の第一人者、トム・ミッチェル カーネギーメロン大学教授の見解を引用し、「これからの激しい環境変化の中、子どもたちには、①歴史を中心としたリベラルアーツ、②協働すること、③学び方を学ぶことが重要になる」と結びました。

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続いて、「未来の人財を育成するために教育に求められること」というタイトルで、独立行政法人大学入試センター 審議役(兼)試験・研究統括補佐官の大杉佳子氏と、株式会社日本データサイエンス研究所CEO、RISU JAPAN共同創業者・取締役の加藤エルテス聡志氏による対談が行われました。大杉氏は、将来予測が立ちにくい未来の社会において、「既存のリソースを未知の課題の解決に活かしていく力の育成」こそが重要であり、そのために学校教育は、「『知識の質』とともに未知に対応できる『思考の質』を高める学びの提供に進化していかなければならない」との認識を述べられました。また、教育改革の視点として、「①実生活に密着した教育内容への進化、②最新技術の様々な局面での積極活用、③伝統と革新のバランス」についても指摘されました。加藤氏は、これからの時代を生きる資質・能力として「変化に対応する力、つまり、『変化耐性』が重要である」との認識を述べられました。さらに、多くの子どもへの教育経験を通した知見として、「変化耐性を身につける方法を探るのは難しいが、それを奪う方法を限定するのは簡単」であり、「失敗を責め、間違ったことに対して叱ると、子どもは試行錯誤ができなくなり、変化耐性が簡単に奪われてしまう」とお話しされました。

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続く対談では、就社するという一般的なロールモデルではなく、起業という道を選択した若手起業家の本音トーク、「僕らが起業した理由と自分たちが受けてきた教育について」が行われました。X Tech Ventures共同創業者兼ジェネラルパートナーの手嶋浩己氏の司会進行の下、30代の起業家代表として、株式会社Gunosy 取締役ファウンダー兼LayerX代表取締役の福島良典氏、20代の若手起業家代表として、ポジウィル株式会社 代表取締役CEOの金井芽衣氏、10代の若手起業家代表として、現役高校生でもあるワンファイナンシャル株式会社 代表取締役の山内奏人氏が登壇しました。それぞれが学校教育で体験したことは違えど、3名とも共通して「学校の先生は特別な存在」だったと述べました。福島氏は、「部活動の先生が人間としての基本を教えてくれた。人間としてなめているところを叩き直してくれた。だからこそ、今の自分がある」と語りました。また金井氏は、「『コンプレックスや逆境の経験こそが誰にも盗まれない価値』と背中を押してくれた先生の言葉が、今でも自分を支えてくれている」と語りました。山内氏は、「起業と学校の間で揺れながらも学校に通い続けられたのは、常に人間軸で私を見てくれた先生がいたこと」であり「私の中で、先生は人生の意思決定のパートナーのような存在だった」と語りました。また三人からは、「楽しさを覚えさせる教育を追求してみたい」との声や、「価値観や好きなものは人によって異なる。一人一人の生活スタイルや価値観にフィットしたパーソナライズされた教育ができたら面白い」などの発言もありました。

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オープンディスカッションでは、教育界を中心にビジネス界の方々も含めた活発な議論がなされました。会場からは、「公教育、学校に対する様々な考えを直に聞けたのがよかった。ここで聞いたことを学校での日々の取組み、考え方にどう生かせるのかを考えたい」、「まだ考えがまとまらないが、逆にまとまらないことが価値だと思う。考えるきっかけをもらった」など、様々な発言がありました。特に、「学び方、学ぶ姿勢をどう育んでいくか」と「変化耐性をどのように育んでいくか」いう声が非常に多く、「これらの力を付けていくための意欲付けや、そのための課題づくりに日々向き合っている」とコメントをされた教員の方もいらっしゃいました。

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「教育イノベーションイニシアティブ シリーズシンポジウム」では、教育界及び各界、すなわち、省庁・研究者・教育委員会・現場の実践者である学校長や教員・教育NPO、さらにはビジネス界と多岐にわたる方々が、多様な意見を持ち寄り、「教育のそもそも」を考える場です。博報財団は「場をご提供する」ことを支援しています。

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